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2014.09.03 Wed
『なぜイチローはトップヒッターでいられるか。』
みなさん、こんにちは。
美容師名鑑編集部 Bireki Magazine編集部 石渡です。

いよいよ9月ですね。
東京ディズニーランドでは、ハロウィーンパレードが始まり、
否が応でも年末に一気に進んでいく……。
日本って本当に時間が経つのを早く感じさせてくれる、
とっても面白い国ですね。
(というか、ハロウィーンも、クリスマスも、バレンタインも、
そもそも日本の風習ではないですが……)





さて、スポーツの秋。
世界に誇れる日本人のスポーツ選手はたくさんいます。

サッカーの本田圭佑選手、メジャーリーグの田中将大選手、スケートの浅田真央選手……
ほかのスポーツを見ても、世界で活躍する日本人アスリートはたくさんいます。

私は個人的に野球が大好きです。
そんな折、ある本を読んだときに、とても興味深い記述があったので、
ここでみなさんにご紹介したいと思います。


日本が誇る最高の打者。

それは間違いなく、イチロー選手です。

米メジャーリーグの長い歴史において、最高安打数262本を誇り、
今も現役で活躍し続ける大打者です。

彼の成績については今さら語るまでもないのですが、
イチロー選手の代名詞と言えば“安打数”です。

野球に詳しくない人のためにフォローしますと、
野球選手は色々な形で評価されます。

もっとも評価価値が大きいのは日本一・世界一の称号。
これはチームとしての評価です。

そして次いで個人成績。

投手の場合、

「勝利、奪三振、勝率」

で評価されることが中心になります。
どれも直接的に勝利へと貢献できる数字だからです。


打者の場合では、

「本塁打、打率、打点」

となります。
日本では、この3部門で一位を独占すると“三冠王”という称号を与えられます。

あれ……

安打数が入ってないじゃないか。

そうです。

イチローのようなホームランバッターでない場合、
一般的には「打率」が目標値になるのです。

しかし、イチローを語るとき、必ず出てくるのが安打数。
これはイチロー自身もインタビューや記者会見で答えるように、

「安打数にこだわっている」

自他ともに認める彼の基準値です。


イチロー選手がほかの打者と何が違うのか。

それはまさに、この“目標設定”だと、その本は言っています。


〜一般打者の場合〜

目標値=打率


通常、3割を超えると好打者と言われます。
3割とは、10回打席に立って、3回ヒットを打つこと。

これ、意外と難しいんですよ。
(と、野球論になると長くなるので割愛)

厳密に言うと、ヒットじゃなくてもOKです。
内野安打(正確にはヒットですが……)、エラー、暴投などなど。
またフォアボールやデッドボールであれば、打率は下がりません。
どんな形であれ、塁に出れば、打率が下がることはありません。
現状を維持することができます。

ですので、打率のトップ争いをしている打者がいた場合、
シーズンも終盤になると、試合を欠場したり、打順を後ろの方に変更します。
(しかしプロ野球には規定打席というルールがあり、この打席数を
クリアしないと打率争いには参加できません)
つまり、規定ギリギリの打席数のほうが、失敗する可能性が低くなるからですね。


では、イチロー選手はどうでしょうか。

〜イチロー選手〜

目標値=安打数

結果を簡単に言うと、

ヒットを打てばいい

のです。

わかりますか?
この違い。


ヒットはそんなに簡単に打つことができません。
それは一般打者もイチロー選手も同じです。

1試合4回の打席に立ったとき、
ヒットが打てるのは、せいぜい1〜2回。
いや、0回というのすらザラです。

4回打席に立って、ヒットが1本以下であれば、
打率は下がります。
(というか3割3分という高い数値を割り込みます)

このとき、打者の心理状態はどうなるでしょうか。

「あぁ、、やっちまった。あそこはもっと粘るべきだったのか」
「いや、カーブを無理にでも当てて内野安打ってのも……」
「待てよ、投手は荒れていたからフォアボールを狙えばよかったのか」

とても悩みます。

人間というのは、野球選手に限らず、
自分に関わる数値が下がることを極端に嫌うものなのです。

もっと具体的に言うと、
利益と損失が同じレベル(例えば金額)だった場合、
損失の方が2倍近くネガティブな感覚を受けるそうです。
だから、できるだけ損失を受けたくないという心理になる。
500円を得することよりも、500円を損するほうが精神に与える衝撃度が大きいということでしょうか。

これを行動経済学では、

「損失回避性」

と呼ぶそうです。

だからこそ、打率を下げたくないから、
エラーでもいい、デッドボールでもいい、
なんなら打席に立たなくてもいい!
という心理状態になるのです。

この状態になると、あらゆることをネガティブに捉え始めます。
どんなスポーツでも同じだと思いますが、
こういう消極的なメンタル状態だと技術が発揮されない。
思い切り良く、ふだんの技術が出せない状態になります。

このマイナスなスパイラルを「スランプ」と呼ぶのだと思います。


では一方、イチロー選手はどうか。

彼が狙っているのは同じくヒットです。
しかし、ヒットなのです。

フォアボールやデッドボールは狙いません。
なんとしてもバットに当てようとします。
これが大きな違いのひとつ。
消極的になる必要がない。
少なくともバットに当てないと球は前には飛ばない。
だからこそ、ボテボテの内野ゴロでもイチローは全力疾走します。
なにせ、ヒットが欲しいから。


そしてもうひとつ。
イチローはシーズン終盤になっても打順を下げません。
それはイチローが打率を気にしていないから。
(いや、厳密には気にしているらしいですが……)
だからこそ、打順は問題ではなく、多くの打席数が欲しいのです。
多くの打席に立った方がヒットを打てる確率が上がるから。

ここには秘密があるのです。
それは……

「ヒットは減らない」

ということ。

「おいおい、何を言ってるの?」

え?
ヒット数は、三振しても減りません。
打率は、三振すると下がります。

つまりイチローが設定している目標値には、

「下がる」

という現象が起こらないのです。

つまりイチローのメンタルには、損失回避性が発生しにくいのです。
ヒットは、1本1本を積み重ねていく作業。
ヒット数は減らないから、心悩まずに、毎回の投手と向かい合い、
1本のヒットを打つことに集中できるのです。
これこそ、イチローが強い(もしくは平静と言うべきか)メンタルを持って
野球というスポーツ、いや打席という彼のステージに
集中できている大きな要因なのではないでしょうか。

この安打数という“減らない数値目標”をもとにしたイチローは、
安打数だけを見ても高いレベルにまで到達しました。
その結果が彼の高打率に繋がっていっているのでしょう。

この考え方を一般社会に当てはめるのは難しいのかもしれません。
ただ……、
再来店率、店販率、パーマ比率、カラー比率……
もし、このような比率を中心とした目標設定にしている企業があれば、
見直してみる価値はあるのかもしれません。

率ではなく、数字に置き換えてみるだけで、
上下する恐ろしい数値(率)から、積み重ねる喜びのある数字に変わる。

と思うのです。

率というのはマネージメントするものにとっては分かりやすい。
他者との比較がしやすいからです。
しかし、それを貼付けられる人はどうでしょうか。

もしかしたら、苦しい状態にあるのかもしれません。

損失回避性という人間の心に潜む習性を、
どのようにビジネスに生かしていくか。
もしくはマネージメントに生かしていくか。
ちょっと研究してみる必要性がありそうじゃないですか?




株式会社パイプドビッツ
美容師名鑑編集部 Bireki Magazine編集部
兼任編集長 石渡武臣