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2014.08.19 Tue
『日本酒業界の風雲児! 20代の起業家に学ぶ硬直した業界に刺激を与える方法』
Bireki Magazine読者のみなさん、こんにちは。コラムニスタのカズワタベです。
普段はフリーランスのプランナー/ディレクターとして、ウェブやクリエイティブに関わる様々なプロジェクトに携わっています。

月に一度更新される本コラムでは、私がこれからの時代の新しいヘアサロン運営の参考になるのでは? と思った異業種の方にインタビューをさせていただいて、その手法を紐解いていきます。

第三回となる今回は株式会社clear代表取締役の生駒龍史さんをお迎えします。
僕と同い年の経営者でもある彼は、日本酒の定期販売サービスや、独自のメディア運営を通じて日本酒業界に新しい風を吹き込んでいます。外から見ると古いイメージのある業界に刺激を与えるため、どんなことを考え、実行しているのかお聞きしました。



(カズワタベ、以下、質問者同じ)
今日はよろしくお願いします!
まず初めに生駒さんが代表を務めてらっしゃる株式会社clearの事業についてお話いただけますか。

生駒龍史さん、以下省略)
「現在は日本酒を中心とした“SAKEカルチャー”を世界に広げるウェブメディア『SAKETIMES』の運営を行っています。日本酒の専門知識から、クスっと笑えるエンタメSAKE情報まで幅広く情報を発信しています。
また、これまでは日本酒の定期購入サービス『SAKELIFE』や、渋谷の日本酒ダイニング『sakeba』、オリジナル日本酒『First Kiss』など、通販・飲食店・製造の分野で日本酒事業を創業・運営してきました」

日本酒を中心に様々な分野でご活躍なさってますね。そもそも日本酒に着目したのはどういうきっかけだったんでしょうか?

「初の日本酒事業である『SAKELIFE』を創業するまでは、日本酒に良いイメージを持っていませんでした。
美味しくないし、二日酔いするし、オッサンっぽいし。
ただ三年前に『SAKELIFE』の共同創業者である有限会社『油忠(あぶちゅう)』の二十五代目である高橋正典氏に日本酒を飲ませてもらい、それがとっても美味しかったんです。
今までのイメージを覆す体験でした。その強烈な体験をもっとみんなに共有したい! と思ったのがきっかけですね」

しかし『SAKELIFE』の運営を始めた時点で、すでに日本酒の通販サービスって存在していましたよね。
他と差別化するために、どんなことを考えて事業を作っていったんでしょうか?

「確かに日本酒の通販は数多く存在していました。大きなショップでいうと楽天内のストアなどですね。
ただ、そういった店舗はあくまでもお酒の「スペック」と「価格」で勝負をしていました。精米歩合60%の山田錦を使った純米大吟醸を、業界最安値で最短明日お届け! といったものです。
ただ、お酒というのはスペックや価格で楽しむものではありません。
日本酒はその製造背景や、どの料理と一緒に飲むかなど、「ストーリー」が合わさって初めてその魅力を最大限に発揮します。
そのため『SAKELIFE』では、ただお酒を毎月送るだけではなく、そのお酒のストーリーをたっぷりと解説したメルマガや、そのお酒に最適なお猪口や徳利などの酒器も同時に配送することでお酒そのものではなく「お酒の嗜み」をお届けしようと思っており、その点が最大の差別化要因だったと思っています」

日本酒というモノを届けるだけでなく、日本酒を飲むという体験を届けた、そう言えるかもしれませんね。
その後、店舗の運営を経てオリジナル日本酒である『First Kiss』を生み出すに至ったわけですよね。
このオリジナル日本酒を作ろうというアイデアはどこから発想したんですか?

「渋谷に『co-ba』というシェアオフィスがあるのですが、ここがクラウドファンディングによって支援を募集し、成功を収めていました。
『co-ba』はまっさらなテナントの状態から、作成過程を支援者に公開しながら進めており、製造側と支援者側との一体感を強く感じられるプロジェクトでした。
日本酒を軸に、同じように一体感を感じられるプロジェクトを立ちあげられないかと思い、オリジナルの日本酒をつくることにしたんです」

クラウドファンディングという新しい仕組みと日本酒を組み合わせることで、資金面だけはなく、支援者との繋がりも得られたわけですよね。
そういう意味では先ほどの「日本酒を飲むという体験」をさらに拡張したプロジェクトだったのではないでしょうか。
そして今では『SAKETIMES』というウェブメディアの運営を手がけ始めたと。
メディアの運営についてはいつ頃から考えていたんですか?

「2013年には考えていました。それまで行ってきた事業は、どれも適正規模で成功していたのですが、その要因を考えるとやはり重要なのは「モノ」をより充実させる「情報」なのだなと考えるようになっていました。
お酒を一本買ってもらうより、お酒の魅力を知ってもらう記事を一つ読んでもらうほうがよりハードルは低くなりますし、多くの方にリーチできるという点でも、メディア事業の必要性を感じ始めていましたね」

日本酒業界でも、通販・飲食店・製造・メディアの運営をすべてやっている人はいないんじゃないでしょうか。
ひとつの業界で横断的に事業を行ってみて感じたことはありますか?

「日本酒の魅力を知らない人に日本酒を飲んで欲しいのなら「美味しい日本酒があるよ!」と声をあげても効果は薄い、ということですね。
それで来てくれる方は既に日本酒の良さを知っている人なので。多角的な事業領域で、様々な角度からアプローチしてはじめて日本酒の魅力を知ってもらえる人たちがいるということを実感できたのは大きな体験でした」

特に私たちのような20代にとって、日本酒というのは興味がありつつ、なかなか近寄りがたい存在だったりしますもんね。生駒さんの事業が上手くいっているのは、そういう存在である日本酒のことを丁寧に伝え続けた結果だと思います。
Bireki Magazineが対象としている美容業界も言ってみれば硬直化した業界ではあると思いますが、同じく古い業界と見られていた日本酒業界にイノベーションを起こしている起業家である生駒さんから見て、どのような課題があると感じられますか?

「あるとすれば、業界の中にいる現役の方々の「課題意識の薄さ」なのではないでしょうか。
僕がこれまで日本酒業界に感じていた課題点、例えば海外進出をする際には輸出だけでなくPRにも相当力を入れないと難しいということも、業界の現役の方の中には実感がない場合があります。
外から見れば明らかな問題を、中の人が認識できていないというのは大きな課題なのかなと。
同様に、美容業界にもイノベーションが起きていない、あるいは起きづらい状態なのだとしたら、それはそもそも「課題意識」が薄いことに起因すると思うので、まず何が問題なのか? という意識を持つことが大切なのかなと思いました」

ありがとうございます。生駒さんのこれまでの活動は、まさにご自身の課題意識が生み出したものだと思いますし、それに対する改善策が適切だからこそ、どれも上手くいっているのでしょう。
それでは最後に生駒さん、そして株式会社clearの今後の展望を教えてください。

「日本酒の魅力を多くの人に伝えていきたいですね。
それは国内のみならず、世界中の人々にです。そのためには、法律・流通・情報の三点が重要なポイントになってきますが、前者二点は徐々に改善されつつあります。
ただ情報だけは能動的に発信していかなければなりません。僕は「伝え手」として、日本酒の魅力を広めていければなと考えています」

ビールと同じように、世界中どこでも日本酒が飲める日もそう遠くはないのかもしれないですね。本日はありがとうございました!



いかがでしたか? 20代で起業家として日本酒業界に刺激を与えている生駒さんの考え方や姿勢は、美容業界はもちろん、どんな分野であれ参考になるものだと思います。
お話を伺っていて、この連載の第二回で編集者のモリジュンヤさんが挙げていた「一つの物事をいろんな視点から見ること」を生駒さんも自然に実践しているように思いました。
それはインタビュー終盤でお話していた「課題意識」からくるものでしょうし、業界に漂う閉塞感を打破するために必要な姿勢なのではないでしょうか。
そういった姿勢は、初めに手がけた販売事業にとどまらず、飲食店・製造・メディアとどんどん新しい分野に手を伸ばしていくところにも現れています。
事業を多角化していくことで、他の事業に対して良いフィードバックが生まれることも少なくはありません。
今やっていることだけに固執することなく、広い視野で業界を俯瞰することで新しい課題を見つけ、適切な方法で改善を繰り返していく。
これは間違いなくどの業界にも通じるやり方ですが、言うは易く行うは難し。もしできたとしたら、その分野において貴重な人間になれることでしょう。
ご自分の立場でどのようなことができるか、この記事を読んだ方はぜひ考えてみてください。