知識人と美容師を繋ぐソーシャルウェブマガジン

美歴マガジン記事一覧 » 「体験を購入し、一緒にストーリーを作ることの楽しさを提供していきたい」
2014.03.20 Thu
「体験を購入し、一緒にストーリーを作ることの楽しさを提供していきたい」
毎月1回、日本の明日を担う企業人のインタビューを配信しています。企業のトップとして、プロジェクトのリーダーとして、成功を収める人物の話には、様々なヒントが隠されています。

今回は、日本最大規模のクラウドファンディング・プラットフォーム、「CAMPFIRE」を運営する、株式会社ハイパーインターネッツ代表取締役の石田光平さんのインタビューをお送りします。

campfire01


お米のEC事業からクラウドファンディングへ

–事業立ち上げにいたる沿革について詳しく教えてください。

僕は、大学で経済の勉強をしていました。

それと合わせて当時から、インターネットで、いわゆるWebサービスを調べる作業に取り憑かれていて、海外のサイトやニュースで新しいWebサービスを探す事が日課でした。

それが特に活かされているわけではないのですが、インターネットにおけるビジネスは、提供するコンテンツが無料なのに、経済が成り立っているのだなと。今思えば、それしか記憶に残っていません。

特に当時のWebサービスのほとんどはそんな感じだった気がします。
これは、経済学の参考書とか授業ではあまり触れられない、無料経済や贈与経済みたいな概念でした、たぶん。

かなり数字ゴリゴリの数量経済史かなんかのゼミに入っていたのですが、卒論ではWebサービスと経済みたいな事を書いて提出しました。奇跡的に単位が取れて卒業できました。

ちょうど就活のタイミングと重なって、その頃からインターネットを活用した新しくて面白いビジネスに携わりたいなと考えていました。

そして、大学卒業後にインターンをしていたインターネットベンチャー企業に就職しました。
その会社は、恵まれていて、インターンや新卒が新しいサービスの企画・開発・運営を任せてもらえました。
そこに、「インターネットを使って在庫を流動化する」というキーワードがありました。


–「インターネットを使って在庫を流動化する」とは具体的にどのようなことなのでしょうか。

今でもよく分かりません。

例えば、映画館を想像してみてください。
平日の昼間はガラガラで、夜や休日はお客さんがたくさん入っている事が当たり前です。でも、支払う金額は一般料金の1,800円です。
平日の昼間の価格を1,200円くらいに値下げすれば、昼間の空席も埋まるかもしれません。

そういったことをインターネットで実現するためのサービスを、ガラケー向けに取り組んでいました。

映画の他にも、加重平均を取り入れた形でホテル・旅館版などもありました。
取り組んでいたサービスを分かりやすくいうとそんな感じです。他にはタイムシェア的なサービスです。

でも、どれも上手くいきませんでした。ビジネスモデルは最高に面白いと思うのですが、今思えばそれ以外の部分が力不足だったと感じます。

その後に立ち上げたのが、簡単に言うと「お米のECサイト」です。
このサービスは、インターネットでお米を購入するだけではなく、田んぼのオーナーと面積単位(1アール)で契約し、365日の間で好きなタイミングでお米を自宅に届けてもらうという仕組みです。

お金を払って田植えをする前から田んぼを契約して、一緒に生産していくストーリーを閲覧できたり、更に田植えや稲刈りなどを家族と一緒に「体験」することができます。
実際に収穫される量は固定なのですが、単にスーパーマーケットや実店舗でお米を購入することと比べると、自分の田んぼのお米がどう育っていくのかという、ちょっとしたゲームっぽさがありました。

実家が農家の方なら分かると思いますが、送られてくるお米の中に一緒に作っている野菜が入っていたり、大口の人には手書きの手紙が入っていることもありました。
仕組みとしてそれを最初から考えていたわけではないのですが、エモーショナルな結果を産みました。

サイトも、お米の味や品種を紹介するというよりも、生産者がどんな人なのか、どうやってそのお米を作っているのか、どんな炊き方がおすすめかという、普通にお米を買う時には目に入らないような点にフォーカスした見せ方にこだわりました。

例えば、無農薬合鴨農法で作って、道路側のお米は一般には販売しないというような、徹底的にこだわっている孤高の生産者がいれば、地元のブランドにこだわって若手を組織して大規模に稲作事業を展開する生産者、夫婦2人で愛情を持って育てる生産者、平日はサラリーマンの生産者。
オーナーは味よりも生産者のストーリーを見て、お米を選んでいました。

日本の主食であり、毎日当たり前のように食卓で食べている白いお米も、実はそこに至るまでの過程は様々です。

要するに、当たり前に享受している在庫に、付加価値を加えて流動化したかったのです。

しかし、それも上手くいきませんでした。理由はいくつかありますが、当時はソシャゲの黎明期で、「この仕組ってゲーム画面で表現したらすげー面白いじゃん!」って事でソシャゲ版を作ろうとして、予算を全部使ってしまいました。そこから暫くは、なかなか結果の出ない時期を過ごします。

サービスを閉鎖するかどうするか、このままではまずいぞという事で、開始当初から雑誌でもこのサービスを紹介してくれていた、家入(一真氏)に売却をしました。後のハイパーインターネッツの共同創業者です。


–先の都知事選に出馬された家入さんですね。

そうなんですか?!

僕はそのお米のEC事業をやりながら「この考え方は、農業だけではなく、アートやクリエイティブの分野でも展開できるのでは」と考えていました。そもそもお米がうまくいったら野菜や魚でやろうと考えていました。
ある意味、お米を作る事とアートを作る事って何か新しいものをゼロから生み出すという点では共通したクリエイティブなのかもしれません。

そこで、思い出したのです。大学の頃に無料経済みたいな事を考えていて、Webで何かを発信しているコンテンツはほぼ無料で享受できました。
しかし、もしかしたら稼ぎがなければ生きていけないから、無料のままではいつか終わってします。それなら、継続して欲しいと思っている人が、投げ銭のようにサポートできればいいんじゃないかと。

そのような考えが合わさって、次に取り組みたいサービスが漠然と見えてきました。

そういえば海外に音楽でそういったサービスがあったことを思い出したのです。Webサービスを調べるのが日課でラッキーでした。
それがいわゆる「クラウドファンディング」で、僕が取り組みたいと考えていたものと合致しました。「Kickstarter(キックスターター)」が代表的なサービスです。

当時、日本にはそのようなサービスを提供している会社は無かったので、家入との会話の中で偶然にも「次にやりたい事ないの?」という話になって、「クラウドファンディングがやりたい」と話したところ、「面白いね、早速会社作ってやろうよ」となりました。その後に会社を退職して1ヶ月後の2011年1月にハイパーインターネッツを創業しました。

そして2011年6月「CAMPFIRE」を立ち上げました。そこからは、気付いたら現在に至ります。
ちなみに今でこそクラウドファンディングと呼ばれるマーケットになっていますが、その時はクラウドファンディングという言葉自体がなかった気がします。



プロジェクト成功の鍵は、「情熱」

–クラウドファンディングというのは、具体的にどういうサービスなのでしょうか。

次ページへ>>