木村拓哉のモバコに見る、新店舗開業は”ブランディング”から始めると失敗する!という話。
手元資金がある美容室は意外と多いらしい
コロナ禍にあって、多くの企業が最大まで融資枠を使って資金集めに奔走したかと思います。
そして美容室は、意外とダメージが大きくなかった(飲食店に比べれば)のではないでしょうか。
とはいえ、微妙な赤字が続いているサロンは多いと思います。その赤字の手当に融資金を使っている経営者も多いようです。もちろん雇用を守ること、会社を存続させることが経営者の仕事ですから、守備に資金を使うことは間違っていないのですが、資本主義経済の原理原則でいえば、利益の出ないことにだけ投資をしていると、市場からはじき出されてしまうことになります。
出店で店舗頭数を増やすことで負担を軽減する
このような状況にあって、手元資金を元に出店計画を打ち出している経営者さんもたくさんいらっしゃいます。(社内の反発はあったとしても)借りたお金には利子をつけて返さないといけない事実を考えれば、正しい判断だと思います。店舗数を増やすことで、1店舗、1店舗の返済負担を小さくするのは当然の判断です。(すでに赤字が大量にある場合は厳しいですが)
さて、コロナを体験して(継続していますが、、)、これから出店する際に、何に気をつけたほうがいいのか。
このコロナ禍において出店しようとしている方々からご相談を受けたり、話をしていると感じることがありましたので、書き残しておこうと思います。
新規出店はどんなプロセスでするのがいいの?
まず、美容室(特にブランド力のある)が出店するとき、ブランディングから考えるタイプの方々がいます。特にビジュアル先行型で考える傾向の人たちです。
確かにこれまでブランディングというとビジュアルから入るケースは多かったと思います。ペルソナなどを決めて、この層はこういうデザイン、カラーが好き、という視点から店舗ブランドを検討する方法です。または、うちのサロンはこういうスタイルを推しているから、そこから入るパターンです。
昔からそうだったのかもしれませんが、、、このパターンで出店計画を立てるととても苦労するというのは明確になってきています。コロナを体験して、老若男女が年齢を問わず衛生管理に対して意識を高めています。また方法論(デザインやビジュアル)よりも、あり方(居心地やライフスタイル)への興味、関心が高まっています。もちろん、まったくそのようなことをまったく考えない層がいることも確かですが、大多数の人たちがそのようなマインドにシフトしているので、徐々にこの流れは、全体に根付いていくと思われます。そのような時にデザインだけで勝負するのは、とても大きな賭けになります(かなり特化している一部のブランドは別として)。
では、何を基準に新店舗のブランドを検討するべきなのでしょうか。
これは異業種ではすでに始まっていますが、”新しい体験” ”新しい価値”の提供です。
「新しい体験」は、実は新しくなかった
「新しい体験」なんて思いつかないよ!
という声が聞こえてきますが、そうでもありません。この”新しい”という言葉の前には見えない言葉が隠れています。
それは、
”美容室では”新しい体験
です。
これまで美容室では体験できなかったこと、ほかの業種では当たり前だったかもしれないことを美容室で体験できることです。これが新しい体験です。
ほかの業種で行われていて、それがお客さまにとって価値のあることであれば、美容室で取り入れない理由はありません。そしてほかの美容室でももし取り入れていたとしても、あなたの美容室で取り入れていなければ、それは新しい価値の提供になります。
例えば、木村拓哉さんが出演しているマクドナルドのCM「モバコ」はモバイルコーヒーという、アプリでコーヒーを事前購入するというもの。しかも、CMでコーヒーを買っているのは女子高生です。そもそも女子高生がコーヒーを飲むというのは今の文化には一見なさそうですが、スタバに行けば、かなりの女子高生が並んでいます。(もちろん彼女たちは普通のコーヒーではなく、もっと甘いものを飲んでいるのでしょうが、コーヒー需要もありそうです)
https://www.mcdonalds.co.jp/campaign/coffee/
モバコも新しい風に見せているが新しくない
このモバコのスタイルは、すでにスターバックスなどでは行われている購入方法です。どうしても時間がかかるスタバでのオーダーも事前にアプリでメニューを選び、来店するときには完成しています。ここで大事なのは「新しい価値」です。何が新しい価値かというと、ペインポイントをなくしたことです。
ペインポイントとは、以前の記事にも書きましたが、顧客にとって苦痛になることです。
スタバで苦痛になるのは、「メニュー選び」、「オーダーの難しさ」、「待ち時間の長さ」です。(これがいいのに!という人は顧客ではなくファンです!)
この3つに魅力を感じず、苦痛と感じる多くの人たちに対して、そのペインポイントをなくしたのがアプリダーダーです。これによって、気軽に、しかも幅広くオーダーできるようになりました。「モバコ」も同様に、店舗で並ぶ時間をなくすという意味ではペインポイントを削減しているという見方ができます。
小さな仮説と改善の繰り返しは基本中の基本
次にモバコは期間限定で実施されます。テレビCMも流して、しかも木村拓哉出演で、相当な資金をかけていると思いますが、これはリーンスタートアップの典型例です。リーンスタートアップとは、最小限の資金と方法で仮説の実証を繰り返す方法論ですが、モバコも最小限のコストで実施して、恐らく改善点を発見して、そのあとに改善の仮説をたてて、よりよいサービスに変更していくのでしょう。
美容室の場合も、最小限の資金でお客さまのペインポイントをなくすような”新しい体験”を準備して、それに対する改善仮説をたてて、チェックと修正を繰り返すことで、消費者にとって有意義な新しい価値を提供できるようになると思います。
まず、大事なのは、美容室における既存のアイデア、既存の常識を前提にしないということです。そこに頼るときっと失敗してしまいます(ここでの失敗とは、利益を生み出さないということです)。
「現在の顧客にとってのペインポイントの洗い出し」
「ほかの業種では当たり前のことをいかに取り入れるか」
「最小限の資金でどのようにスタートするか」
新店舗を検討されている経営者さんには、ぜひこの視点を取り入れていただきたいです。

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